Dragon Island

日々是修行。

予備知識ゼロで読んだ『六番目の小夜子』

こんにちは。
読まないタイトルは、どんなに有名でもスルーしてしまうKei Alexです。

予備知識ゼロ

タイトルだけは辛うじて知っていましたが、内容はおろか作家名も把握していませんでした。
恩田陸先生も名前は知っていましたが、本書の著者であることは知りませんでした)
ネタバレレビューやウィキペディアも抵抗なく見るタイプなんですけど、本書に関してはまったく触れずに生きてきました。

発行から30年以上経ちますし、情報が洪水を起こしている時代なので、これはかなり貴重な状況かもしれないと思って、この機会に読んでみることにしました。

思春期の日常

とても面白かったです。

登場する生徒たちは共感度が高いです。
自分の学生時代や学校での体験を思い出し、読んでいる間ずっと「そうそう」「あったあった」と思っていました。
黒歴史になりそうなことまでも、淡々と、かつ丁寧に描写されていて、「モウヤメテー!」と思う部分もありました(笑)。

また、主人公たちが感じる学校に対する奇妙さのようなものも、「ああ、あるなあ」と頷いていました。
雅子ちゃんほど詩的に表現できませんが、言ってることはすごくわかる気がするんですよ。
社会人になってからの職場や、卒業して数十年後に足を踏み入れる学校には、全く何にも感じないので、これも思春期や現役時代特有の感覚なのかなあと思います。

本作は発行当時の現代劇なので、令和5年では古臭く野暮ったく見えるところもあります。
主人公たちの口調とか、手編みのプレゼントとか、ワープロの印字の癖とか、喫茶店に学生が入り浸るとか、もしかしたらピンと来ないかもしれないなあと思いました。
あとはスマホがあったら破綻したり解決したりする場面があるので、もどかしいかもしれないなあとも思いました。

キャラクターの中では、僕は転入生の沙世子さんがとても好感度が高いです。文庫の表紙の人です。
こういう性質のキャラクターの中でも、トップクラスに面白いです。
男子では由紀夫と加藤くんが好きです。由紀夫はもちろん、加藤くんもたぶん根はいい奴です(笑)。

唯一、アレすぎて痛い人が一人いて僕はドン引きしました。
ラスボスとして憎まれ役を一手に引き受けているんだと思いますが、かなり強烈です(笑)。
本当に酷い。

この人を含めて、登場人物たちの言動にはリアリティがあって、小説家の凄さを感じたりもしました。

物語のラストは僕は好きな種類の結末だったので、楽しく読み終えました。

そうそう、学園祭の場面では、Youtubeジムノペディを流しながら作中の速度を想像で調節して読みました。
臨場感があってとてもよかったです。


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